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面白法人カヤック デザイナーブログ

制作者にインタビュー!デザイナーが活躍したプロジェクト3選

あけましておめでとうございます! 企画部の高田です。

今回は2022年を振り返って 「デザイナーが活躍したプロジェクト」 を3つピックアップしてみました。各プロジェクトを担当したアートディレクターやデザイナーにこだわりポイントを聞いたのでアイデアの出し方などの参考になれば嬉しいです。ぜひご覧ください!


1. レトロでキャッチーなクラフト感のある世界観 〜 CONVERSE JAPAN FW22 THE VARIANT プロモーション 〜

ALL STAR 100 TREKWAVE HI
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2022年6月にリリースされた、コンバースジャパン FW22コレクション「THE VARIANT(ザ・ヴァリアント)」のプロモーション。カヤックは、コンバースが掲げる今までにない進化した異業種アイテムを展開するというテーマ「THE VARIANT(ザ・ヴァリアント)」から、人類との遭遇をコミカルに描いたビジュアルと動画を企画・制作しました。 B級モンスター映画の告知ポスターやコマーシャルをモチーフにした世界観は、どのように生まれ、つくりこまれていったのでしょうか?担当したアートディレクターの金子とデザイナー野口に聞きました。

■アイデアは、「3行企画」で考える

ー 二人はどんな領域を担当しましたか?

金子 :金子はアートディレクターとして、野口はデザイナーとして関わりました。他にもクリエイティブ・ディレクターやプランナーのメンバーもいましたが、僕たちデザイン領域の2人も企画のアイデアを出すところから完成まで一貫して携わりました。

ー 世界観(トンマナ)について、「B級映画」という発想はどのように生まれたのでしょうか?

金子 :まずコンバースの過去施策をリサーチした上で、世界観のアイデアをたくさん出しました。企画を考える段階で、どのようなビジュアルにするかということも一緒に検討し、参考資料を集めて整理しました。

最終的には、 ①どういう人たちをターゲットにするか ②「THE VARIANT」でどんなメッセージを届けるか、どういうふうに解釈するか ③どんなSNSを使ってどんな企画をするか(どんな事件が起きたら面白いか) という3行企画の形式で企画をまとめていきました。

この3行企画のアイデア出しの中で、アートディレクターの金子が発想した「未確認変異生命体 VARIANTS」という企画が元になってB級映画のポスターのような世界観を展開することになりました。いままでのコンバースとは違う”新種”に人類が初めて遭遇するようなイメージです。

■ペーパークラフトの撮影はトラブルの連続!

ー 「ペーパークラフトで制作した美術セットを撮影する」という表現方法にはどのようにたどり着いたのでしょうか?

金子 :大前提としてシューズがモノとして魅力的に見えることが大切です。その上で驚きがあるビジュアルをつくりたかった。シューズは実際の商品を撮影する前提だったので、映画ポスターの中のモチーフをミニチュア化することで、商品が際立ち、驚きのあるビジュアルを作れるのではないかと考えました。この発想はカンプデザインを制作したころに思いつきましたね。

ー ストーリーを作ってからイラストを描き起こしたそうですが、ストーリーづくりはどのように進めましたか?

金子 :5つの新商品があったので、それぞれのシューズの商品特性を映画に当てはめるとどんなジャンルの映画になるかという点から考えました。具体的なストーリー設定としては、シーン、場所、登場人物、モデルとなる映画、訴求ポイントを資料に整理しました。 設定の大枠が決まった後は、映像監督に具体的なストーリーのプロットを考えていただき、その後は監督のアイデアも交えながらビジュアルのシチュエーションも詰めて行きました。 この時、ストーリー設定を考えながらビジュアルに関する資料を集めたり、ロゴやカラーリングも固めて、世界観を作り込んでいきました。

ー ペーパークラフトのミニチュア撮影で苦労した点はありますか?

金子 :企画した段階では簡単にできると思っていましたが、とても大変でした。 まず1枚のイラストをどのようなパーツに分解して配置するか、それぞれのパーツをどんな大きさで印刷するのか、ライティングをどうするか、カメラの焦点をどこに合わせて逆にどこをぼかすのかなど、検討するべきことが山積みでした。 撮影の打ち合わせで課題が明らかになり頭を抱えていた時、デザイナーの野口がBlenderを使ってイラストを3DCGにして、デジタル空間の中で撮影のための検証を行うという方法を思いついてくれました。検証は大変でしたが、これによって課題がクリアになり、美術セットの制作に進むことができました。 撮影では静止画と動画の2種類を3日間かけて撮りました。商品が5つあったので必要なカットが膨大で大変な撮影でした。

ー このプロジェクトを担当した感想はいかがですか?

野口 :デザインやOOH、純広告がメインのカヤックとしては珍しい案件でしたが、デザイナー主導で案件を進めていけた点はとっても楽しめました。想定以上にチャレンジングな案件でしたが、クライアントさんをはじめ、撮影や美術の外部パートナーさんなど、いいチームに恵まれてなんとか乗り越えることができました。印刷や撮影に関する知見を広げることができたのは良かったです。挑戦することは大切ですね。

■プロモーションムービー


2.野田ゲー独特な世界観を見事に表現 〜 スーパー野田ゲーWORLD 〜

スーパー野田ゲーWORLD

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つづいてのピックアップは野田クリスタルによる野田ゲーのNintendo Switch用ゲーム化第二弾で、2022年7月に発売された「スーパー野田ゲーWORLD」です。前作同様、クラウドファンディングの出資者から送られてきたたくさんの素材を使って20種類のゲームを作成しました。野田ゲー独特の世界観を視覚的に作り上げることや、複数のゲーム制作が大変そうなプロジェクトですね。担当したアートディレクター/デザイナーの立石にこのプロジェクトのポイントを聞きました。

ー 立石さんはどんな領域を担当しましたか?

立石 :ゲームのアイデア出しから、アートディレクション全般、および、デザイン制作まで担当しました。

ー 前作の野田ゲーが生まれて初めてのゲーム制作だったそうですが、制作に向けて準備したことはありますか?

立石 :いままではいちユーザーとしてゲームプレイしていましたが、野田ゲーの制作に向けて、制作者目線でゲームを見るようにしました。例えば、モーションやエフェクトがどうやってつくられているのかを観察しました。 あとは過去の名作の動画をたくさん見たり、実際にプレイするようにしました。有名タイトルでいえば、『ポケモン』、『ドラクエ』、『ファイナルファンタジー』など。ミニゲーム系は『メイド イン ワリオ』や『リズム天国』。ドット絵の参考として『ロマンシング サ・ガ』などを見ました。 さらには任天堂の『スプラトゥーン』を開発したチームのインタビューなど、大手ゲーム開発企業の取材記事などをたくさん読んで参考にしました。

■ 野田ゲーの世界をつくるのは誰でも使えるあのツール

マヂカルラブリーをM-1グランプリ2020の王者に導いた『つり革』漫才をゲーム化。WORLDでは、オンライン対戦が可能に。

ー 野田ゲーの世界観をつくり上げるためにどんな工夫をしましたか?

立石 :制作メンバーとディスカッションを重ねる中で、野田ゲーらしさとは何なのか?を話す時間を多く取りました。 ゲームアイデアはもちろんですが、野田さんが描く愛嬌のあるイラストや、独特のモーションなどが世界観を生み出していると考え、野田さんが作った作業環境を再現する方針で制作を進めました。 具体的にはPhotoshopやペンタブなどの専門的なツールを使わずに、野田さんも使っているWindowsのペイントとマウス操作だけでイラストを描いたり、フォントを縦横に伸ばしたり潰したり、アンチエイリアスをなくして画像を制作したりなどの工夫をしました。並行して担当していた別のプロジェクトでアンチエイリアスを入れ忘れて画像がガビガビになるトラブルもありました笑

立石 :また、キービジュアルはクラウドファンディング用とゲーム本作用の2種類を制作しました。『スーパー野田ゲーワールド』はオンラインで対戦できるようになったことが前作からのパワーアップポイントです。世界を野田ゲーに染める、覆い尽くせるような思いを込めて、スケールの大きさや野田ゲーの持つカオス感をコンセプトにビジュアルを制作しました。

■ 3DCGで人物を再現するのは大変…

『信 〜NOBU〜​』はお笑いコンビ・千鳥のノブさんを起用したアクションゲーム

ー 特に思い入れのあるミニゲームはありますか?

立石 :『信 〜NOBU〜​』ですね。ノブさんを起用したゲームの企画がダークファンタジーものに決まったので、そちらの世界観イメージを固めるためカンプデザインを制作したのですが、そちらを野田さんにみていただいた時に笑っていただいたのが印象的でした。

難しかったポイントとしては3DCGでノブさんを再現することです。ノブさんの顔を再現するために撮影した写真をベースに3Dモデルを制作したのですが、簡単にはいかず苦労しました。 パッと見でノブさんだとわかるようにするために何度もブラッシュアップを重ねました。最終的にはご本人にも喜んでもらえたので良かったです。 『龍が如くシリーズ』で俳優の方を3DCGで再現していますが、あれはすごい技術なんだと改めて実感しました。


3. ヨーヨーと連動するエフェクトが超COOL 〜 MUGENYOYO(ムゲンヨーヨー) 〜

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株式会社タカラトミーから発売された、電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイエンターテイメント『MUGENYOYO(ムゲンヨーヨー)』。アプリで撮影すると、リアルタイムでヨーヨーの軌道上にエフェクトがつき、誰でもクールな動画を撮影することができます。ヨーヨーと連動するかっこいいエフェクトはどのように生まれたのでしょうか?担当したデザイナーの河邉とモーションディレクターの佐藤に聞きました。

■ 3年目の同期同士、はじめて2人だけで企画・提案する案件

ー 二人はどんな領域を担当しましたか?

河邉 :私はプランニングや、商品ロゴをはじめとしたヴィジュアルのアートディレクション、UI/UXデザインなどを担当しました。簡単に言うとプランナー兼デザイナーのようなポジションです。

佐藤 :自分は普段アニメーションの制作や映像制作を担当していますが、このプロジェクトでは河邉と一緒に提案から参加しました。制作面では、エフェクトの制作とCMの監督を務めています。 僕たちは当時、新卒入社3年目の同期だったのですが、先輩がいない2人だけの状態で企画提案をする機会はこれが初めてでした。プロデューサーから話を聞いたときはちょっと緊張しましたね。

ー 提案はどのように進んだのでしょうか?

河邉 :最初はタカラトミーさんから「ヨーヨーに合成するデジタルエフェクトをつくってほしい」という趣旨の依頼をいただいていました。しかし、せっかくなら自分たち自身がアツくなれるおもちゃをつくりたいという思いがあったので、単なるエフェクトの提案だけではなく、世界観とストーリーからつくり込む提案をしました。

■ ストリート × サイバーパンクのクールな世界

使いやすさはもちろん、ムゲンヨーヨーの世界観も重視したUIデザイン

ー アプリの世界観(トンマナ)はどのように作り上げましたか?

河邉 :自分たちが子供の頃にかっこいいと思っていたもの、憧れていたものをつくりたいという思いがありました。それを大切にしながら、まずはいろいろなアイデアを出していきました。例えば、商品がアニメ化されると仮定して、ヨーヨーで描く魔法陣からモンスターを召喚できるというアイデアや、アプリの中にシャーマンキングの守護霊のような相棒キャラクターが登場するというアイデアもありました。

最終的には「ストリート × サイバーパンク」の世界観が採用されました。ヨーヨーがLEDで光ったり、ARで拡張されてエフェクトがついたりするのは近未来感があるよねという話がきっかけで膨らんだアイデアです。ヨーヨーはスケートボードのようにストリートカルチャーの中で発展したホビー。単に洗練された未来像をつくるというよりは、「カルチャーを帯びた世界観として、 若い世代に「自分たちのものだ!」と感じてもらえるような雰囲気を目指しました。結果的に、キャラクターを使うアイデアよりも幅広い世代のユーザーに届くトーン&マナーになったと思います。

■試行錯誤の末にたどり着いた 「線」と「パーティクル」のエフェクト

アプリがヨーヨーを認識し、動きに合わせたエフェクトを表示する

ー たくさんのエフェクトがありますが、どのように制作したのですか?

佐藤 :まずは2人で一緒に「どんなエフェクトがあったら面白いか」というテーマでブレストして、とにかくアイデアを出し合いました。そして出たアイデアを河邉は静止画デザイン、佐藤はアニメーションモックと、二人で手分けしてアイデアをヴィジュアル化していきました。

条件を揃えていろいろなエフェクトを比較するために、同じヨーヨーのデモ動画に、とにかくたくさんのエフェクト案を重ねて、どういう表現がかっこいいのか検証を進めました。河邉と佐藤の2人で1日中テレビ電話をつなぎながらディスカッションをして、何日も試行錯誤しました。

本当は”ムゲン”にエフェクトを増やしたかったのですが、スケジュールや技術的な制約もあるので、ある程度のパターン化をする必要がありました。 そこで、最終的には「線」と「パーティクル」の表現をそれぞれいくつか制作して、それを組み合わせることでたくさんのバリエーションを生み出しました。

ー エフェクトでこだわったポイントはありますか?

佐藤 :例えばスプレー缶でインクを吹き付けるようなエフェクトがあります。この動きをつくるために、グラフィティの動画をたくさん見ました。「スプレー缶のインクが出るエフェクト」をつくるためのチュートリアルや参考記事なんて、この世に存在しないんですよね笑。だからとにかく見て、やってみて、試行錯誤するしかなかったです。いろいろな表現手法を組み合わせることで、なんとかリアルなスプレー缶の感じを再現することができたと思います。

■初めて挑戦したアプリのUIデザイン

MUGENYOYO本体に内蔵されたNFCタグでアプリとヨーヨーが連携する。

ー 初めてアプリのUIデザインを担当したそうですね。どのように取り組みましたか?

河邉 :自分は、今回が初めてのアプリ制作でした。最初はUI/UXに関する本を読み返したりしたのですが、基礎的な考え方などの普遍的な情報が多く、今回目指したいUI/UXの情報としては不足を感じました。そこでnoteやブログを読み漁り、最新の「イケてる」表現や見せ方をリサーチしました。会社の先輩に話を聞くのも参考になりましたね。

単に洗練された使いやすいデザインを目指すのではなく、まずかっこよくて、ワクワクするデザインである必要性を感じていました。そのため、おもちゃアプリの中で一番イケてるものをつくるぞという意気込みで望みました。ターゲットである小中高生の間で流行っているスマホアプリを一通りダウンロードして操作してみたり、逆に大人向けのかっこいいゲームなんかも参考にしながらデザインを制作しました。『サイバーパンク2077』や『スパイダーマン:スパイダーバース』は穴が空くほど見ました。

ー このプロジェクトを担当した感想はいかがでしたか?

河邉 :自分たちがアツくなれる提案をしたことで、エフェクト制作依頼から始まり、アプリ制作や商品ロゴ、サイト、PV、CMなど、多岐に渡る領域でお手伝いさせていただくことができました、 小さい頃はおもちゃでたくさん遊んでいた自分が大人になった今、クリエイターとして子どもたちにおもちゃを届ける側になれたのは感慨深かったです。お店に商品があったり、TVで流れるCMを見たりすると、頑張ってよかったなと思います。 この商品をテーマにした漫画があるんですが、その漫画の中に自分がデザインを制作したロゴが登場 しているのを見たときはとても感動しました。

いかがでしたか?

今後、それぞれのプロジェクトの詳しい話も、このブログでお伝えできる機会をつくりたいと思います。 以上、「デザイナーが活躍したプロジェクト2022」でした。

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