こんにちは!意匠部の高橋です。
今回は12月のカジュアルゲームチーム3連載のラストです。
私は最近までUIデザイナーとして日本向けのソーシャルゲームのデザインをしていましたが、現在はハイパーカジュアルゲームのデザインに携わっています。
「そもそもハイパーカジュアルゲームって何?」という方はこちら↓
designblog.kayac.com
上記の記事にもありますが「作ったデザインはデータで思いっきり評価」されるのがハイパーカジュアルゲームという場です。
いくつかのデザインを実際のユーザーに出し分け(A/Bテスト)して、デザインごとにダウンロード数、プレイ時間などの数字を測ることができます。
結果はデザインのセオリーが全く通用しないこともしばしばで、「予想外のデザインが跳ねる」ということが多発します。
今回はハイパーカジュアルゲームのデザインをしていて驚いたことをシェアします。
◆「色」で大きく結果が変わる
ハイパーカジュアルゲームはプレイ動画広告を見て、「面白そう!」と思ってくれた人がインストールをしてくれます。
そして、どの広告がどのくらいダウンロードされたのか結果を見ることができるんです。
例えばこちらの『Posing Cut』というゲーム。
元のプレイ動画広告の背景は白でしたが、黄色に変えるだけでユーザーの流入数が大きく跳ね上がりました。
動画広告の結果を受けて、ゲーム内でもこの色味を採用しています。
他のゲームでも色を変えるだけで大きく結果が変わることが分かっています。
そしてこれは美しい色の組み合わせとは限りません。
こちらの『Number Master』の広告では数字の色変えに加えて、背景を空色から無地に変えてみました。
プレイが見やすくなるためか、無地背景の方がDL数が多い結果になりました。
通常のゲーム内でこの背景を出すと、「開発途中なのかな?」と疑ってしまうレベルなのですが、広告だと効くんです。
「分かりやすくなれば結果が出る」
これはよくハイパーカジュアルのデザインにおいて起こります。
次項でも述べますが、見た目が美しいものよりも、分かりやすいデザインの方が効果が出る。
ハイパーカジュアルゲームを作るデザイナーはまずこの事実を突きつけられます。
◆見た目のクオリティが正義じゃない
こちらはNumber Masterのアプリアイコンです。
右のアイコンは全く同じ絵でディティールのクオリティを上げてユーザーテストにかけましたが、同じ構図の絵であればクオリティを上げてもほとんどダウンロード数が変わらないことがわかりました。
また、こちらはDraw Saberというゲームのアイコンです。
こちらは細部に凝って、クオリティを高めたアイコンは負け、シンプルなものが勝ちました。
日本向けのソーシャルゲーム開発ではデザインを都度ユーザーテストにかけるということが難しいが故に、開発陣側が「いける!」と納得できるクオリティの高いクリエイティブが正義でした。
しかし、ハイパーカジュアルゲームのユーザーテストでデザインを計測すると、クオリティの高いクリエイティブがむしろ数字的にはマイナスになることもあるのが分かり、衝撃でした。
クオリティを上げるのに制作工数をかけたけど、結果は変わらない、悪くなった、といったことは多々あり、デザイナーとしては「なんで!?」と途方に暮れることもありました。
◆とにかくシンプルさが求められる
世界観とゲームの戦略性で引っ張っていくリッチなソーシャルゲームやコンシューマーゲームと違い、
プレイに結びつかない世界観や、入り組んだゲームの戦略性を加えてしまうと、人気が下がってしまうのもハイパーカジュアルゲームの特徴です。
コアな世界観を与えると普遍性が下がって、刺さる層が限られてしまう事が考えられます。また、情報は増えるほど「難しそう」という印象を与えるのかもしれません。
(ハイパーカジュアルゲームのメインターゲットは、普段ゲームをやらないライト層です)
デザインもゲーム性も複雑にすると人気が下がってしまうので、情報は削ぎ落としてシンプルにするのが基本です。
ハイパーカジュアルゲームは
- ほんの数秒の広告でゲームの面白さを伝え、インストールしてもらう
- 普段ゲームをやらない人に夢中になって長時間プレイしてもらう
- 最小工数でたくさん作ってヒット作を生み出す
という特性上、デザインは簡素なものが望まれます。いかに少ない手数で明確に情報を伝えるか、装飾力ではなく、設計力の勝負になってきます。
このテスト結果を通じてのデザイナーとして気づき
「デザインは適材適所」
身の回りのデザインにおいても「見た目が美しいけど、分かりにくいデザイン」よりも、「見た目はアレだけど、分かりやすいデザイン」が望まれる場面はよく見かけます。
だったら、「見た目も使いやすさも質の高いデザインが最高」か?といえばそれだけではないことにも気づきました。実際にチープな見た目のものがユーザーに喜ばれる状況を見た時に、チープなデザインというのは悪い面だけではなく、とっつきやすかったり、気軽に触れることができる力があるんだな、と気づきます。
そしてハイパーカジュアルゲームは「究極のお手軽ゲーム」という名の通り、手軽さ、わかりやすさが求められる場なので、そういうデザインが効果的なんだと気づきました。
この気づきをもって、周りを見渡すと、デザインは適材適所で「あえて粗末に作ってる」「ダサく、わかりやすく」というデザイン戦略もあることにも気づきます。
「格好いいビジュアルの効果」
ハイパーカジュアルゲームをプレイしていて思ったことがあります。簡素なビジュアルは一瞬で明確な情報伝達ができる反面、感動させることができない、ということです。もちろんゲームプレイは夢中になる程楽しいのですが、格好いい世界観に引き込まれたり、可愛いキャラクターに愛着が湧くといったビジュアルがもたらす感動体験はありません。
逆説的に、格好いいビジュアルにする事によって憧れや愛着といったユーザーの情熱的な感情を引き出すことが出来る、と言語化できました。
「デザインを計測することの大切さ」
デザインの結果は本当に予想外の連続なので実際に出してみないとわからないのが実状です。
デザイナーが案出しの段階で無意識に捨ててしまっているようなデザインでも、テストにかけてみたら一番人気のデザインになった、ということがよく起こります。
デザインをテストで計測することで、いかに自分の想定の範囲内だけでデザインを作っているかを肌で感じることができました。
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