意匠部

面白法人カヤック デザイナーブログ

暗室でフィルム写真をプリントした話

こんにちは!意匠部デザイナーの大桐です。
先日、社内向けにフィルム写真のプリントワークショップが開催されました!🎞️

その時の話、、、、、、
の前に、フィルムカメラの話をまずは少しだけ。

皆さんはフィルムカメラで写真を撮ったことがあるでしょうか?📸
デジカメや高機能なスマホカメラが登場した今、フィルムカメラで写真を撮る意義を感じる人は少なくなっているかもしれません。

私もそうでした。
学生の頃、写真は全てスマホで撮っていました。

しかし、デザイナーになって数ヶ月経った頃、
「このままなんとなく写真を撮り続けていても上達しないのでは?狙った時にちゃんと最高にカッコいい一枚を撮れるようになりたいな...」
と思うようになりました。

そう呟くと、OJT 担当の小原さんが
「それならフィルムカメラがいいんじゃない。勉強になるよ😊」
と、とても素敵なフィルムカメラを貸してくれました。

めっちゃいいカメラやん...優しすぎますね。

■ フィルムカメラを使う理由

初めて触ったフィルムカメラ。
現像するまではどんな写真が撮れているかわからないし、
その上、貸していただいたフィルムカメラはフルマニュアルなので、F値・シャッター速度・ピントなどを全て手動で設定しないといけません。

「なんて不便なんだ」と最初は思いましたが、撮り直しができない分、一枚ずつ丁寧に撮るようになるし、 カメラの知識なしで撮影すると現像した写真が全てダメダメになってしまうので、どうやったらいい写真が撮れるか勉強するようになります。

なるほど。 とりあえず数打ちゃ当たると思ってスマホでパシャパシャ撮るのとは訳が違います。
小原さんが「フィルムカメラがいいんじゃない😊」といった理由がわかった気がしました。

■ 「撮影」だけではない「現像」の世界

ある日、フィルムカメラで撮った写真をカメラ屋さんで現像してもらい、「#club-kayac-photo」という社内の Slack のチャンネルに載せてみました。

「#club-kayac-photo」は、自由気ままに写真を投稿するチャンネルです。これは去年の夏、意匠部のBBQで撮影されたフィルム写真。


すると、

人事のさとけんさんに、こんな声を掛けていただきました。
暗室で写真を現像する職業を「プリンター」と呼ぶらしく(「暗室マン」とも呼ばれるそう)、 声を掛けてくださったさとけんさんの奥さんは、プロの「プリンター」でした。

そしてなんと、さとけんさんの奥さんが社内向けに「プリントワークショップ」を開催してくれることに!


▼ さとけんさんの奥さんのインタビュー記事はこちら
fujifilm.jp

「写真を撮る」、「デジタル画像をソフトウェアでレタッチする」という工程が写真の全てだと思っていた私は、現像するという工程にも深い世界があるのだということにハッとしました。

その世界はどんな世界なんだろう...!!!
その謎を探るため「プリントワークショップ」に参加することに🎞️
そうと決まれば、まずは現像するために必要なとっておきの写真を撮る必要があります。
他の参加希望者とともに、フィルムカメラを持って鎌倉の美しいものを写真に収める旅に出かけました。


しかし、、、
「いい写真撮るぞ〜〜」
と意気込んでいた時は、いい写真は撮れず。

夜になって、会社の近くのよく行く居酒屋に立ち寄ってふとシャッターを切った時、いい写真が撮れました。
フィルムカメラだからすぐ見れないのでわかりませんが、確かにいい写真が撮れたという感覚。

その時、居酒屋のオヤジさんに
「上手く撮れてたら俺の遺影にしてくれよ」
と言っていただきました。

プリントワークショップへのやる気がみなぎってきます。


▼ そのオヤジさんがやっている定食 & 居酒屋
tabelog.com

■ フィルムが写真になるまで

カラーフィルムのプリントは全暗(完全に真っ暗な状態)での作業になるので、初めての人にはなかなか難しいらしく、今回はモノクロのネガフィルムを使いました。

ネガフィルムには色が反対になって記録されます。そのフィルムに光を照射して印画紙などに定着させることで、写真が出来上がります。
そのため、「①フィルムの現像」「②プリント」の2段階の手順を経ます。

「①フィルムの現像」とは、光の強弱が記録されている撮影済(露光済)のフィルムを薬品に浸し、像を浮かび上がらせることです。

※ 撮影後のフィルムは、真っ黒で画像を確認できない状態のため、薬品で化学反応させて像をくっきり浮かび上がらせる必要があります。

現像したフィルム


「②プリント(焼き付け)」は、ネガフィルムに浮かび上がった像を、白黒を反転して印画紙に焼き付けることです。

ネガフィルムの現像処理は、(ラボの場合は)機械で行われるため品質の差は出ないのだそう。
力量が問われるのは、プリントの工程。
おぉ、これは挑戦しがいがありますね💪

■ 暗室へGO!

今回は、桜木町駅の近くにあるレンタル暗室「THE DARKROOM」さんにお邪魔し、プリントを体験させていただきました。
この日はさとけんさんの奥さんの元上司で、日本プリンター協会の元会長の加藤法久さんも特別参加で教えてくれました!

thedarkroom-int.com

写真をプリントする印画紙は感光性のため、光が入ってきてしまうと印画紙全体が真っ黒になってしまいます。
そんなデリケートな特性があるため、プリントは暗い部屋(暗室)で行う必要があります。

ということで、暗室へGO🏃‍♀️

初めての暗室は、静かで、薬品の匂いがして、真っ暗(赤色灯はついています)で、独特な緊張感がありました。

赤い光は印画紙を感光させづらいそうです


光が入ってしまわないように、暗室の入り口は二重扉になっていて、入室する時は必ず一方の扉を閉めてからもう一方の扉を開けます。

二重扉になっている!

半日でフィルム1本36枚分のネガをプリントできないので(プロはできるのか...!?)、どのネガをプリントするかじっくり決めていきます。
暗い暗室の中に入ってしまうと、どのネガを選んだかわからなくなるので、選んだネガには袋の上からペンで印を付けます。

STEP 1 ネガを引き伸ばし機にセット

まず、引き伸ばし機にプリントしたい画像の元データであるネガをセットします。
ネガから光を通過させて、レンズを通して印画紙の上に画像を映し出してくれるんです。
(ほとんどの場合、元のフィルムのサイズよりも大きく引き伸ばすことになるので引き伸ばし機と呼ばれているのだそう。)

印画紙は、写真を印刷するときに使う紙の1つで、感光性の乳剤が紙の上に塗られているんだそうです。

STEP 2 印画紙に光を照射する

ここが、プリントの一番の醍醐味(と言っても過言ではないでしょう!)。
プリントする写真の明るさ・陰影・コントラストをどのようにするか決め、光を照射する長さやフィルター(コントラストを調整するもの)をコントロールしていきます!

なんと、光が当たる長さが0.1秒変わるだけで色の濃さが変わってしまいます。 正確な秒数の光を照射するために、引き伸ばし機にはタイマーが付いています。

タイマーをセットすると、決めた時間の長さだけ印画紙に光を照射してくれますが、
ただ一様に印画紙全体を照射すればいいのではありません。

写真によって、
・光を長く当てて色を濃く出したい箇所
・光を短く当てて色を薄めに出したい箇所
がありますよね。背景と被写体とのコントラストをくっきりさせたい場合や、白い肌を演出したい場合、質感が表現できていない白い部分をもっと濃く出したい場合など。

そういった場合は、引き伸ばし機から出る光を手や専用の道具(下図)で遮ることで、光が当たる時間を部分的に調整して濃淡を作っていきます。

覆い焼きに使う専用の道具。持ち手を曲げることで印画紙に影が映らないようにしているらしい。
出典: https://ja.wikibooks.org/wiki/%E7%99%BD%E9%BB%92%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AE%E6%9A%97%E5%AE%A4%E4%BD%9C%E6%A5%AD/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88


このように部分的に露光時間を追加するアプローチを「焼き込み」と言います。
逆に、部分的に手や道具で光を覆って露光時間を減らすアプローチを「覆い焼き」と言います。

私たちが普段仕事で使う、Adobe Photoshop や Adobe Illustrator で馴染み深い「焼き込みカラー」や「覆い焼きカラー」もここからきていたんだとわかってデザイナー大興奮!!!


しかし、単に光を手で遮って濃淡を作ろうとすると問題が発生します。
光を短く当てた部分と長く当てた部分に、濃淡の境目ができてしまいます。

その境目が発生しないようにするにはどうすれば良いでしょうか?

.......わかったでしょうか?
光を長く当てている箇所と短く当てている箇所がパキッと分かれなければ良いのですね。 そうならないよう、手を振りながら光を遮っていきます。これぞ職人芸!

STEP 3 印画紙を薬液に浸す

いよいよ、光を照射した印画紙に像を浮かび上がらせていきます。

印画紙を薬液に浸す作業は、現像・停止・定着の3ステップに分かれています。

ちなみに、
・室温が変わる度に薬液に浸すべき時間の長さが変化し、写真の品質にばらつきが出てしまう
・室温が低いと薬液の化学反応が起きないことがある
という理由から、暗室は常に20℃に保たれているそうです。

薬液① 現像液

現像液は、印画紙上に光で形成された潜像(あるけどまだ見えるように現れてはいない像)を可視化します。
この時点で写真が浮かび上がってきます!

化学反応させる工程のため、長く浸しすぎると真っ黒になってしまいます。 なのに、トングを使って液から写真を掬い上げるのが難しく、めちゃくちゃ焦りました。その焦りからさらに、滑り、焦りのループ…

薬液② 停止液

はぁ、やっと紙を救え(掬え)ました…

現像液の工程が終了したら、すぐに停止液に入れます。停止液に入れることで、現像液の化学反応が中断されて、フィルムの過度な現像を防いでくれます。

薬液③ 定着液

定着液は、印画紙上の未反応の化学物質を取り除きます。この工程により、印画紙がそれ以上光に反応しなくなり、明るいところで扱うことが可能になります!

STEP 4 水で洗い流す

定着後は、残っている薬品を完全に取り除くために、印画紙を清潔な水で洗い流します(薬品が残っていると画像劣化の原因になるそうです)。
水で洗うことで、思い出を長い間保存できるようになります。

STEP 5 乾燥させて完成

その後、ピンで留めて自然乾燥させれば…ついに、完成です!!わぁーぱちぱちぱち!

...と言いたいところですが、一回ではイメージ通りに写真の濃淡を表現できておらず、
「もっとこの部分に光を当てよう」
「ここは光を当てすぎて濃くなりすぎたな...」
という反省がいくつか見えてきます。

明るい部屋に移動して写真を確認し、次はどのように光を当てるか作戦会議をします。

その反省を生かして、また印画紙に光を照射するステップから始め、納得がいく一枚ができたらようやく完成です!!!!!!👏

■ プリントした写真を届けにいきました

さて、居酒屋のオヤジさんに
「上手く撮れてたら俺の遺影にしてくれよ」
と言われていた写真は、果たして気に入ってくれるのでしょうか?

この笑顔は...... 気に入ってくれていますね!!!

無事、遺影にしてくれることが決まりました。

いつも美味しいご飯を作ってくれるオヤジさんに、少し恩返しができてよかったです。
苦労して作った写真だからこそ、喜んでもらえた時の私の感動もひとしおでした🧂

■ さいごに

ワークショップを開催して丁寧に教えてくださった大場あすかさん、加藤法久さん、THE DARKROOM のスタッフの川崎順平さんには大変お世話になりました。ありがとうございます!また、声を掛けてくださったさとけんさん、素敵な機会を与えてくださりありがとうございました!

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