こんにちは! 私はカヤックが長年サービスしているスマートフォンゲーム<ぼくらの甲子園ポケット>のグラフィック制作を担当している、キムです。 長い間愛された<ぼくらの甲子園ポケット>は、2024年で記念すべき10周年を迎えます!このように長く愛されるようなゲームの開発に携わりながら、長寿ながらも少しでも表現の幅を広げるために、グラフィッカーチーム一同取り組んでいます。
以前の記事ではキャラクターデザインとその立ち絵についての進化についてお伝えしましたが、今回の記事はアバターへの取り組みについて紹介します!
<ぼくらの甲子園ポケット>(以下、<ぼくポケ>)は、ユーザー同士の「友情体験」を一番の報酬として提供しているゲームです。
<ぼくポケ>のアバターについて
その友情体験をより味わい深いものにするために、<ぼくポケ>には自分のキャラクターを自由にきせかえする機能でメンバーそれぞれの個性を表現できるように取り組んでいます。新しいきせかえはイベントを行うにつれ続々と増え続け、いまではその数はなんと3000種にも及ぶバリエーションを誇ります。キャップ、マスク、ユニフォームなど、大きく6種類のパーツで分類されていて、様々なバリエーションを組み合わせて自分だけの容姿を作る事ができます。
グラフィックの「ブレスト」で、表現の幅を広げる
<ぼくポケ>の世界観を言葉で表現するなら、「ハチャメチャ」です。自由度が高く、定番な野球のユニフォームもあれば、かっこよくて可愛いファンタジーな衣装、最終的には「どうやって被ってるの?」と思わせるような、面白いきせかえまで幅広く存在しています。野球をしているようで、別のことをしているようなハチャメチャな世界観は<ぼくポケ>のユーザーにも根強く反映されており、面白いきせかえの人気が高く、全チームのメンバーが揃えるなど、「どうやって自分のキャラクターを面白くするか」をユーザーと一緒に考えられる、面白い文化を持っています。
こういう世界観と文化を持っている<ぼくポケ>だからこそ、グラフィックにおいてそのスピードと勢いは何よりも大事な要素になっております。その勢いを大事にするため、企画側の最小限のチェック以外をグラフィッカーに制作を任せてもらえるきせかえを制作できるフローを設けています。そのフローで多くの「面白きせかえ」を生み出した企画の一つを紹介させていただきます!
スケッチ会は、上記の図のように仕様のルールは一旦置き、ランダムなお題に対して10分の短い時間できせかえのアイデアをスケッチする会です。制作時間の多くを1から100に整えることに使うグラフィッカーにとって、まさにグラフィッカーの「ブレスト」と言えるこのスケッチ会は「面白さ」「勢い」を持って0から1を鍛えられる機会ができ、制作のリフレッシュと共に、次の制作に繋げることができました。
古い仕様からの切り口で、表現の幅を広げる
<ぼくポケ>は2010年の序盤に開発されたゲームです。10年近くゲームを運用しながら、ゲームの仕組み構成がどんどん最新化できるようチーム一同全力で取り組んでいますが、数多くの制作メンバーの手に渡り少しずつ変化していく中で、どうしても手がつけられなくなってしまった部分や、最新の仕組みにするにはどうしてもコストがかかりすぎてしまう箇所が一つずつ現れるようになりました。
アバターの仕組みについても同様で、例えばアバターの「キャップ」というパーツは、当初野球キャップをベースとしたきせかえから、表現の幅が広がるにつれて、「必ずアバター頭の上にくるように制作する必要がある」、「キャップは頭の全部を覆う必要がある」など、表現の幅を広げるにあたって様々な制約になる仕組みが出るようになりました。これにより、髪の毛の後ろに流れるような被り物や、頭上のシルエットを大きく隠せない小さい被り物を表現することが難しくなっていました。
その中で、グラフィッカーとメンバーの間でも少しでも自然に、多彩な表現を使ってユーザーに斬新さと面白さを届けるため、様々な工夫を施してきました。「どうすれば必ずアバターの上にくるきせかえを、一部アバターの後ろに流れるように見せるか」「どうすれば頭のシルエットを最小限に隠しながら表現できるか」、不可能な理由を逆手に、目的とルールを両立できる折り合いに悩み、制作に取り組んだ結果、「前に出ている部分のシルエットを使って奥行きの表現を出す」「境界線にそうような表現やエフェクトで、両立できるような表現を出す」など、表現の幅を広げていきました。
他職能のメンバーに伝えることで、表現の幅を広げる
与えられた仕様の中で表現の切り口を考えることができると、逆に仕様そのものの切り口を考えるきっかけにも繋がりました。仕様による表現の難しさをプロジェクトのメンバーと話し合う過程で、ゲームエンジンを担当するエンジニアの方々にもこの話が繋がりました。「頭の頭頂部を非表示にする仕組み」があるなら、その仕組みを発動させないグループを作ることで「頭の境界線を覆わなくてもできる表現」が実現可能であることと、その対応にコストを割いて表現の幅を広げる価値が十分にあることに共感してもらうことができました。
グラフィッカーの自分達ではどれだけ大変な改修なのかが分からなかったように、エンジニアの方もグラフィッカーが表現のために必要としている部分がどこかが分からなかったりするので、難しいものだと思っていた部分が、他職能の方に分かりやすく伝え、話し合うことで意外とスムーズに表現の幅を広げることができました。
その後もこの試みを通じて、顔につける「フェイス」のパーツを2つつけることで、顔につけるきせかえを組み合わせて着用することができるようになったりと、グラフィッカー内で解決できない問題を一度他のメンバーに伝えることで、意外な切り口で解決できました。
さいごに
10年近く続いた長期運用タイトルの<ぼくポケ>の中で、アバターのきせかえは性能に全く影響しないユーザーの個性の表現要素です。ユーザーの皆さんがどんなきせかえを好むか、時事や状況によってどれだけトレンドが変わるかなどで、グラフィックデザインを行う上で多くの情報を得ることができ、それがまた新しい「きせかえ」のデザインの根拠になっていきます。こういったユーザーとのコミュニケーションの形としての「きせかえ」の大切さを噛み締めつつ、なるべく表現の幅を広げることができるよう、これからも引き続きメンバー一同で尽力していきたいと思います。長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!